2016年3月22日火曜日

40キロハイクを実施する理由

選手のみんな、保護者の皆様、40キロハイクお疲れ様でした。
きちんと、理由や意義を説明しておらず、それでも完歩してくれた選手達、それを暖かく迎え入れてくれた保護者の皆様、ありがとうございました。
簡単に説明しますが、また、直接お話する機会に詳しく説明させていただきます。

【我慢することで強くなる】
昨今の環境においては、”我慢”するということが少なくなっています。
おなかが空けば、いつでも何でも食べられる。
眠ければ、寝られる。
ほしいものはたいてい手に入る。
そして、何よりも最近は”こどもが楽しむこと”や”こどもの満足度を高める”ことが、当然のようなサービスが世の中に反乱しています。サービスならまだしも、学校教育までが、教育というよりもサービスを提供するようになっているのかと思わされることが少なからずあります。
こういう環境では、こども(保護者も)は、ニーズが満たされることが当たり前となり、どんどんと、”我慢”からかけはなれ、より高いレベルでニーズを満たすものへ向かっていきます。(このことについては後述します)

人間は我慢することで強くなります。

お腹がすくことで、身体が栄養を少しでも効率よく吸収しようという態勢になります。だからお腹がすいて食べるご飯の味は格別なのです。
ご飯前におやつを食べたりジュースを飲んだりしていると、身体が栄養を欲していない状態なので、ご飯もおいしくは感じないし、たくさん食べられないのです。

眠たいのを我慢することで、睡眠の質が高まります。
夜眠る時間、朝起きる時間を決めておくことで、身体はその習慣に、文字通り慣れてくれます。
眠いからといっていつまでも寝ていると、ただ時間を無駄に過ごすだけになります。
人間は大人で5〜6時間眠れば十分です。
中学生であれば、7〜8時間寝れば、成長にも十分な時間を確保できます。
「この子は朝が弱い」のではなく、そう思い込んでいるだけです。

ほしいものはたいてい手に入る時代です。
でも、本当は思うように行かないことが人生です。こどもの内に何でも思うようにできてしまう事になれてしまうと、大人になって、社会になって、また受験で行きたい学校へ行けなくて、そのときに”強く”自分の足で前へ進んでいけるでしょうか?

【我慢することを覚える為の40キロハイク】
我慢することを体験するために、夜中に40キロ歩くのです。
昨日、我々は、歩いていて
足が痛くなりました。
お腹が空きました。
寒くて震えました。
眠くて眠くてしょうがありませんでした。
真っ暗で不安になりました。
すべて、日常の生活ではなかなか体験することのできない事でした。
我慢を乗り越えることで、人間の身体は生理的にも強くなりますし、我慢ができるんだという自信がつきます。

【自分と向き合う経験】
最初は、楽しくわいわい歩いています。
ところが、少しずつ足が痛くなってきます。お腹も空いてきます。そして寒くなってきます。眠くもなってきます。
だんだんと選手達が無口になってきます。そのときに、おそらく考えたと思います。
「なんでこんな想いをしなければならないんだ?」
「なんで夜中に40キロも歩かされるんだ?」
「何の意味があるんだ?」等等。
そして、夜中を過ぎるころには、できれば止めたいと誰もが思ったはずです。
でも、歩き続けます。
そうすると、徐々に”あきらめ”が出てきます。
考えてもしょうがない。ゴールへ向かうしかないんだ。進むしかないんだという”あきらめ”です。ここで、あきらめられた選手は、そうでない選手に比べて、楽に歩けたはずです。なぜなら、(どうせやるならなんとか楽しくしよう)とか、(みんなをたのしませてやろう)という気持ちになると、同じ辛い時間がまったく変わってくるからです。
昨日感じたのは、この”あきらめ”が、言葉を変えると、今の自分に直面するということなのです。素直に自分と向き合うという経験です。
今置かれている状況の文句ばかり、考えていると、何も変わりません。ただ、頭の中は不平不満と文句ばかりです。そうとう辛い一晩になったと思います。
一方、”あきらめ”がついた選手は、自分に生じた現実になんとか前向きに取り組もうとしたはずです。身体はきついけど、楽しめたはずです。
これからの人生、いくらでもこうした”思うようにいかない現実”や”つらいこと”に直面するはずです。そのときに素直に自分と向き合うことができるかどうかで、大きくその後が変わってくると思います。

【サッカークラブでやる理由】
AFC茅ヶ崎はサッカークラブです。
なぜこんな事をするのか?
プロサッカー選手の能力を考えると、心技体の内、”心”がピラミッドのベースにあり、その上に体力や技術が積み上げられていくべきだと私は思っています。
また、一方で、この”心”の部分を鍛えてくれる、鍛錬してくれる貴重な存在が”スポーツ”だとも思っています。サッカークラブだから、サッカーだけ教えてくれれば良いという考えもあると思いますし、間違ってないと思います。でも、人間としても、サッカー選手としても、”心”が伴っていないと、ろくな人生にはならないと思うのです。そして、決してプロのサッカー選手にはなれません。
また、サービスと教育の部分にも触れましたが、現在の社会では、こどもが”楽”で”楽しい”事ばかりを与えています。一方、必ず”教え込む”ことや”与えなければならないもの”もあります。そういったものはたいてい楽しくはないし、楽でもありません。でも重要なのです。本来、家庭と教育がになうべき役割はそこにあると思います。しかし、サービス業化している今の教育では、最低限伝えなければならないことすら、伝えられていないと感じています。
だからこそ、スポーツを通じて、地域のクラブチームを通じてこども達へ”教え込むこと”や”与えなければならないもの”を提供していきます。

西野 努

追伸
でも、本当に下半身全部が痛くなったし、きつかったです。
夜中に食べたおにぎりの味・朝戻ったときにお母さん方が用意してくれていた豚汁の味は、最高でした。本当においしかった。


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